わたしたちの健康2023年9月号 片頭痛

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ページ番号1010082  更新日 2024年1月29日

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朝霞地区医師会 奈良 一成

頭痛には締め付けられ重たくなるような緊張型頭痛や、皮膚の表面が痛む神経痛などがあります。中でも、頭の血管が拡張することでズキズキとした拍動性の痛みが生じるのが片頭痛です。有病率は8.4%と、約12人に1人(男性約4%、女性約12%)で、女性に多い疾患です。多くは10〜20歳代で発症して40~50歳代まで続き、その後年齢とともに軽減・消失していきます。

発作には前兆がない場合(5.8%)と、ある場合(2.6%)があります。前兆のない片頭痛はこめかみから目のあたりが発作的に痛み、痛みの発作は4~72時間持続します。一方で、前兆のある片頭痛は視野が欠けたり(半盲)、ギザギザした光が出る閃輝暗点(せんきあんてん)などの症状が3~5人に1人(約20~30%)の割合でみられます。他にも、情緒不安定になる・気分がすぐれない・あくびを繰り返すなど様々なものがあり、症状がしばらく持続した後に、ズキズキとする頭痛が出現します(前兆は頭痛が始まる前に消失します)。片頭痛の主な誘因(引き金)は睡眠不足や過多・天候や気圧の変化・空腹・光や音など感覚への過度の刺激・ストレス・生理周期など様々です。発作時には、光、音や匂いなどに過敏に反応するようになり、しばしば運動などの身体活動や光、音や匂いなどによって悪化し吐き気やおう吐を伴う場合があります。

片頭痛の原因

諸説ありますが、三叉(さんさ)神経という神経の末端から「痛み物質:カルシトニン関連蛋白(CGRP)」が放出されると、脳を覆う硬膜にある血管などに作用し、血管が拡張され周囲に炎症が起き、その刺激が脳に伝わって痛みが起きる三叉神経血管説という考えが有力です。

片頭痛の治療

日常生活に支障が出る場合は、内服薬を用います。軽度の片頭痛の場合、通常の鎮痛薬かあるいは市販薬が有効です。また、程度が強い場合には、トリプタン製剤の有効性が知られています。片頭痛の原因となる頭の血管に作用して、異常に拡張した血管を収縮させるとともに、三叉神経に作用して「痛み物質」が出るのを防ぎ、血管の拡張と炎症を鎮める薬で、60%以上の方に有効とされています。一方で、治療薬が効果的でも頻回に頭痛が起きてしまう場合には、治療薬の使用過多(市販薬を含めた鎮痛剤で月15日以上、トリプタン製剤で月10日以上)による薬剤乱用頭痛を引き起こす場合もあり、注意が必要です。

片頭痛の予防

片頭痛の予防には、前述の誘因を避けることが重要ですが、内服薬や注射薬も使用します。内服薬として、カルシウム拮抗(きっこう)薬(やく)やβ(べーた)遮断薬、抗てんかん薬、抗うつ薬などが使用されます。また、注射薬は2021年に保険適用となった新しいタイプの予防薬で、劇的に頭痛の頻度を抑えられるようになってきました。「痛み物質」を直接ブロックするタイプと「痛み物質」が結合する受容体をブロックするタイプがあり、どちらも片頭痛を予防する働きがあります。注射開始後1か月で半数近くの人が頭痛の起きる日数が半分以下となり、効果の早い方は投与開始後1週間以内に頭痛が激減する人もいます。内服薬や注射による予防は、適切に行えば生活の質の改善に役立ちますが、注射薬の使用には専門医の診断が必要です。

50歳を過ぎてから初めて片頭痛を発症することは、ほとんどありません。中高年になってからの強い頭痛は、突然の頭痛であればクモ膜下出血、片目が見えにくければ緑内障発作の可能性が考えられます。いずれの疾患も急を要しますので、早期に医師の診察を受ける必要があります。

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