わたしたちの健康2023年5月号 アレルギー性鼻炎 舌下免疫療法について

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ページ番号1009564  更新日 2024年1月26日

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朝霞地区医師会 増田 毅

2019年に発表された全国疫学調査によると国内におけるアレルギー性鼻炎の有病率は49.2%となっており、日本国民の2人に1人は何らかのアレルギー性鼻炎を有していることになります。原因別では、ハウスダストやダニが主原因となる通年性アレルギーの有病率が25.4%、スギ花粉症の有病率が38.8%となっており、特にスギ花粉症はこの20年間で2倍以上有病率が増加しています。現在行われているアレルギー性鼻炎の治療には、内服薬、点鼻薬、舌下免疫療法、減感作療法、抗体療法(生物学的製剤の注射)、手術治療などがありますが、これらの治療法のうち今回は舌下免疫療法について取り上げます。

アレルゲン免疫療法は100年以上の歴史を持つ治療法で、1911年にイギリスでイネ科花粉症に対する皮下注射を行った事に始まります。国内では1963年にハウスダスト、1969年にスギ花粉とブタクサ花粉に対する、皮下注射によるアレルゲン免疫療法(減感作療法)が始まりました。60年の歴史があるこの減感作療法ですが、アナフィラキシーショックなど重篤な副作用があり、治療のハードルが高いことが問題でした。しかし2014年にスギ、2015年にダニの舌下免疫療法が始まり、これまでの注射によるアレルゲン免疫療法に比べ、副作用などが大幅に軽減しました。舌下免疫療法は、自宅で毎日舌の裏に薬を入れるだけで行うことができる治療法です。治療開始前にアレルギー検査を行い、ダニもしくはスギに対してアレルギー反応があるかを確認するとともに、安全に治療を開始できるかどうかアレルギーの重症度もチェックします。舌下免疫療法は血液検査上のアレルギー反応の数値を下げる治療法ではなく、自身が持っているアレルギーに対して症状が出ないように体を慣らしていく治療法です。そのため、3~5年程度の治療期間が必要になりますが、アレルギー体質を変えられるため、スギ花粉の飛散時期に花粉が飛散していることに気が付かない程の効果を実感できるようになります。舌下免疫療法が皮下注射による減感作療法より安全性が高いとはいえ、アレルギーをお持ちの方がアレルゲン物質を接種する治療ですので、副作用が無い訳ではありません。主な副作用は口腔粘膜の腫れ、のどのかゆみ、耳のかゆみ、アレルギー性鼻炎様症状などです。一般的にはアレルギー検査での反応が強い方ほど副作用は出やすくなりますが、軽微な副作用であれば服用後2~3時間程度で改善し、毎日舌下治療を続けていると、やがて副作用自体が出にくくなっていきます。初回は病院内で服用していただき、服用から30分後に副作用の確認を行います。最初の1週間は低用量の薬剤で治療を行い、治療の継続が困難となる重篤な副作用が出なければ、2週目からは通常用量の薬剤で治療を継続していきます。アレルギー症状や副作用が続く場合には、症状が落ち着くまで抗アレルギー薬を併用しながら治療を継続することが可能です。舌下免疫療法は登録認可を受けた医師や医療機関でないと行うことができない治療ですので、治療を希望される場合は、事前に受診をされる医療機関にご確認をお願いします。スギとダニの舌下免疫療法は同期間に併用できますが、スギ花粉の飛散時期と重なる1~5月はスギの舌下免疫療法を新たに開始することはできません。

現在国内で舌下治療ができるアレルゲンはスギとダニのみですが、ヒノキの治療薬を現在国内で研究開発中であり、ヨーロッパではイネ科の舌下免疫療法がすでに行われていますので、近い将来、舌下免疫療法の選択肢がさらに増えるかも知れません。

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