わたしたちの健康2023年7月号 認知症について

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ページ番号1009565  更新日 2024年1月26日

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朝霞地区医師会 菅野 隆

高齢者の物忘れを主症状とする疾患は、以前は「呆け」「痴呆症」と呼ばれていましたが、現在では「認知症」と診断名を統一されています。病名が変ったのは単に差別的だと言うだけでなく、高齢者の物忘れやその他の症状が疾患であるとの認識が医学界だけでなく一般にも広がってきて、疾患である以上治療や予防にも関心があつまり研究も進んできています。

今回は認知症の代表的な2つの疾患について述べてみます。

  1. 「血管性認知症」と言われる疾患で、体の血管が動脈硬化などで内腔が狭くなったり塞がったりして、血液が流れにくくなり、脳にダメージを与えてしまう病気です。脳は臓器の中で最も酸素を必要とするため、酸素を運んでくる血液が滞ると機能不全が起こり、物忘れ等の症状が起こってしまいます。お話はちょっとずれますが、脳の血管だけでなく例えば心臓の血管がつまれば狭心症や心筋梗塞が起こります。人間は二本足で起立して行動する為、頭(脳)は一番上に位置します。重力に逆らって上に血液を送るには心臓は強く動いていなくてはなりません。心臓のポンプ作用が病気で弱まれば脳の機能に重大な影響を及ぼしてしまいます。又、肺の病気があれば肺胞から新鮮な空気中の酸素を血液に取り込む事ができなくなり、脳に慢性的な酸素不足が生じてしまい脳の機能が障害されることになります。血管や心臓、肺といった臓器が傷まないように心がけていく事が必要で、生活習慣病の予防等が重要です。言い換えればこれらの疾患に起因する認知症状は早期であれば治療効果が期待でき、症状が改善する事も珍しくありません。
  2. 「アルツハイマー病」は脳の細胞が原因不明に死んでいき、脳が萎縮していく疾患です。異常なタンパク質が貯まってしまい神経細胞も特異な変化が生じ死んでなくなっていきます。世界中の学者が研究を進めていますが、未だ原因の究明には至っておりません。

最後に治療について簡単に触れたいと思います。血管性については前述しましたが他の疾患同様に身体的な疾患の早期発見早期治療、血管を大事にする事につきると思われます。そしてアルツハイマーと同時に言える事ですが、視力聴力等の感覚器官が衰えれば脳への外的刺激が入りにくくなるため補聴器の利用や白内障等への対応をしないと廃用性の衰えが進み、足腰が弱れば外出も億劫になり孤立してしまいます。手足が何らかの病気でまひが生じた方のリハビリはかなりの苦痛を伴います。認知症の方へも脳トレが有効で、同時に身体的なリハビリも行う事が必要ですが、現実では協力して頂けない事も多く治療者側も悩ましい所です。

薬物療法ではアルツハイマーでは4種類の適応薬が認可されていますが根本的な治療薬ではなく進行をいくらか遅らせる事が期待できるという程度の薬です。

今回2つの代表的な疾患のみふれてきましたが、それ以外にも認知障害を引き起こす疾患は多く存在しています。また機会がありましたら述べたいと思います。

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