わたしたちの健康2026年8月号 ストレスに関連した精神疾患とは?~「適応障害」を中心に~
朝霞地区医師会 関根 俊輔
1.5大疾病に精神疾患が追加された背景と患者数の増加理由
従来、地域医療計画では「がん」、「脳卒中」、「急性心筋梗塞」及び「糖尿病」の4大疾病が重点的に指定されていました。しかし、精神疾患の患者数が急増し、社会的な影響も大きくなっていることから、2011年に国は「精神疾患」を加えて「5大疾病」としました。追加理由は、患者数の増加、長期療養の必要性、社会復帰支援の重要性などです。国の患者調査によると、精神疾患の総患者数は2023年時点で約600万人と報告されており、特に人間関係の悩みによって増加しています。患者数増加の背景には、社会的ストレスの増加、診断技術の向上、精神疾患への理解の進展などがあります。また、精神科受診者数も増加傾向にあり、医療体制の整備が急務となっています。
2.日本がストレス社会と言われる要因と対策の動向
日本がストレス社会といわれる主な要因は、長時間労働、過度な競争、社会的孤立、経済的不安などです。特に職場や学校での人間関係、成果主義の浸透、情報過多などがストレス要因です。ストレス社会の問題点は、心身の健康障害、労働生産性の低下、自殺率の上昇などです。
対策として、国はストレスチェック制度を導入し、企業に従業員のメンタルヘルス対策を義務付けています。また、自治体や企業による相談窓口の設置、メンタルヘルス研修の実施など、予防と早期対応の取組が進んでいます。
3.ストレス関連障害と適応障害の概要、診断基準、合併症
ストレス関連障害とは、外的なストレス要因によって引き起こされる精神疾患の総称です。代表的なものに「適応障害」があり、これは生活環境の変化や人間関係などのストレスに適応できず、情緒面や行動面に障害が生じる疾患です。主な症状は、抑うつ気分、不安、焦燥、睡眠障害、意欲低下などです。
診断基準は、ストレス要因が明確であり、その影響が発症の直接的な原因となっていること、症状が日常生活に支障をきたしていることなどです。前兆として、イライラや不眠、集中力低下などが見られます。合併しやすい精神疾患には、うつ病、不安障害、アルコール依存症などがあります。例えば、会社での人間関係のストレスが原因で、不安や意欲低下が現れて出社困難となり、ストレスを解消するために飲酒量が増えて、昼間から飲酒してしまうといった状況が考えられます。
4.適応障害の診断・治療方法とリハビリテーション、長期予後
診断は、問診や心理検査を通じてストレス要因と症状の関連性を評価します。治療方法は、主に精神療法と薬物療法です。精神療法では、認知行動療法(CBT)が有効で、患者の思考や行動パターンを見直し、ストレスへの対処力を高めます。支持的精神療法は、日常の悩みを聞くなどして患者さんの「辛い」と思う感情を受容し、安心感を与えることで回復を促します。薬物療法では、抗不安薬や抗うつ薬が用いられることがありますが、過度に薬物に頼ることは好ましくありません。休息を取るなど日常生活の工夫や前述の精神療法を導入することが治療指導の第一歩です。
リハビリテーションとしては、職場復帰支援や社会参加の促進が重要です。長期予後については、早期介入と継続的な支援が回復率を高めるとされており、再発予防のためのフォローアップが推奨されています。最近では職場復帰を目的とした専門のリハビリプログラムを導入している医療機関も増えてきました。
5.ストレス社会を乗り切るためのストレス回避・軽減方法
適応障害の対策の第一は、ストレスへの自己マネジメントです。人間社会で生活する限りでは、ストレスをゼロにはできませんので、ストレスを回避・軽減する対策を日頃から考えることが大切です。具体的には、ストレス要因の認識と整理、現実的な目標設定、ポジティブな思考への転換、問題解決スキルの習得などがあります。日常生活での対策としては、十分な睡眠やバランスの取れた食事、適度な運動、趣味や信頼できる人とコミュニケーションを取ることです。また、マインドフルネスや呼吸法などのリラクゼーションの時間を取ることも効果的です。多忙な日々でも、短時間でも自分だけのゆっくりした時間を設けることがメンタルを安定させるには有効です。ストレスを感じた際には、早めに医師などの専門家に相談してください。
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