わたしたちの健康2026年3月号 アトピー性皮膚炎
朝霞地区医師会 比留間 淳一郎
アトピー性皮膚炎は、皮膚にかゆみを伴う湿疹がでて、それがよくなったり悪くなったりを繰り返す病気です。日本国内の患者数は約51万人(2017年推計)にのぼり、近年増加傾向にあります。乳幼児から大人まで幅広い年齢層に見られますが、単なる「肌あれ」ではなく、皮膚のバリア機能(防御機能)の低下と、アレルギーを起こしやすい体質が関係している慢性的な病気です。
なぜ、アトピー性皮膚炎はなかなか治らず、繰り返してしまうのでしょうか。近年、アトピー性皮膚炎は「乾燥肌(ドライスキン)」、「免疫システムの異常」、「かゆみ」の3つの要素が絡み合って、発症したり増悪したりするという考えが主流になってきています。健康な皮膚は「バリア機能」によって外部の刺激をはね返しますが、アトピー性皮膚炎の乾燥した肌はこの機能が弱く、アレルギーの原因になる物質が入り込みやすくなっています。また、アトピー性皮膚炎の患者さんには、免疫システムの異常が起きていると考えられており、「Th2サイトカイン」という免疫にかかわるタンパク質が体内で増加していて、それが湿疹や他のアレルギー疾患を悪化させているとされます。そして、アトピー性皮膚炎の特徴である「かゆみ」は皮膚を搔くことでバリア機能を壊し、症状をさらに悪化させます。また、その「かゆみ」そのものが、根本的な原因のひとつではないかと考えられています。この3つの要素が互いに影響しあうため、アトピー性皮膚炎は治りにくく、繰り返すのです。
この悪循環を断ち切るために重要なのが、「薬による治療」と「スキンケア」です。これが治療の基本になります。中心となるのは、皮膚の炎症を鎮める塗り薬で、基本的にはステロイド外用薬を使用します。塗り薬で大切なのは「塗る量」と「やめ方」です。量が少なすぎると効果が発揮されません。人差し指の先端から第一関節までの長さをチューブから出した量が、手のひら2枚分の面積に塗る目安(1FTU=フィンガーチップユニット)とされています。また、見た目が少しきれいになったからといって自己判断で薬をやめると、皮膚に残っていた炎症がぶり返してしまうことがあります。見た目が良くなってもすぐにやめず、医師の指示に従うようにしてください。また、徐々に薬を減らしたり間隔を空けたりして良い状態を維持する「プロアクティブ療法」も推奨されています。あわせて、毎日の入浴やシャワーで肌を清潔にし、保湿剤で皮膚の潤いを保つ「スキンケア」を続けることで、低下したバリア機能を補うことも重要です。
近年、アトピー性皮膚炎の治療は劇的に進歩しています。これまでは、ステロイド外用薬などを適切に使っても十分な効果が得られず、つらい症状に悩み続ける患者さんが少なくありませんでした。しかし現在では、炎症やかゆみの原因となる物質に直接はたらきかける「生物学的製剤(注射薬)」や「JAK阻害薬(飲み薬)」といった新しいタイプの薬が登場しています。これらの新しい治療薬は、従来の外用療法ではコントロールが難しかった中等症から重症の患者さんに対して、高い効果が期待できます。皮膚の状態が劇的に改善し、長年悩まされていたかゆみから解放されるケースも増えています。
アトピー性皮膚炎の診断には、他の皮膚疾患との見極めや、合併症の有無の確認など、専門的な知識が必要です。また、先ほど紹介した新しい治療薬を使用するには、専門的な判断が求められます。正しい診断と効果的な治療を受けるためにも、日本皮膚科学会が認定する「皮膚科専門医」のいる医療機関を受診することをお勧めします。
アトピー性皮膚炎は、適切な治療とケアを続けることで、症状がない、あるいはあっても軽微で、日常生活に全く支障がない状態を保つことが可能です。症状でお悩みの方も、まずはお近くの専門医を受診してください。
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