わたしたちの健康2026年7月号 低用量ピル

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ページ番号1013659  更新日 2026年7月1日

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朝霞地区医師会 牧田 和也

 ピル(pill)は、元々は「丸薬」を意味する英語ですが、「経口避妊薬」そのものを意味する用語でもあります。わが国でも、「経口避妊薬」よりも「ピル」の方が、一般にもよく使われているかと思います。 

 ピル(経口避妊薬)は、女性が1カ月かけて繰り返す月経周期の中で、卵巣からの卵子の排出(排卵)を阻止することで、妊娠を回避させる薬です。

 世界で初めてこの薬が承認されたのは米国であり、それは1960年(昭和35年)のことでした。ピルの成分は、女性ホルモンであるエストロゲンと黄体ホルモンですが、当初承認されたピルに含まれていたエストロゲンの量が、現在処方されているものよりも多く含まれていました。そのため、それを服用した方に、血管内に血栓という小さな塊を形成して、それが太い静脈内で詰まることで発生する「静脈血栓塞栓症(けっせんそくせんしょう)」が数多く発生し、大きな社会問題になりました。エストロゲンは、血管から出血した時に、その出血を止める作用(止血・凝固作用)を高めますが、その量が多いことで、このような静脈血栓塞栓症のリスクが高まったのです。

 そのことを踏まえて1970年代には、最初に承認されたピルよりもエストロゲンの量を少なく(低用量化)することで、このような副作用の軽減が図られるようになりました。そのため今日では、「エストロゲンの量が低用量の経口避妊薬」が主流となっており、「低用量ピル」として一般にも知られるようになりました。

 わが国では、米国での承認から遅れること約40年後の1999年(平成11年)6月にようやく正式な認可が出され、同年9月より発売され現在に至っています。ただし、ピルは避妊を目的とした薬ですので、医療保険の対象にはなりません。

 ピルの主な効果は言わずと知れた避妊にありますが、それ以外にも月経不順の改善、月経血の量を少なくする、月経時の痛みを軽減するなど、月経に関連する様々な状態の改善効果も知られています。その1つである月経時の痛みが強い「月経困難症」の治療を主な目的とした低用量ピルに準じた薬が2000年代後半以降に複数発売されるようになりました。これらの薬は、「月経困難症」という病気の治療薬という位置付けですので、医療保険が適応されますが、低用量ピルと区別する意味で「低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬(LEP)」と呼ばれています。

 なぜ低用量ピルやLEPが、月経時の痛みに効果があるのか?それは、これらの薬が排卵の阻止だけでなく、1カ月かけた子宮内膜の増殖作用も抑えることにあります。子宮内膜の増殖が抑制されれば、月経血として排出される内膜組織の量が少なくなります。また、子宮の筋肉の収縮を促すプロスタグランジンという物質の産生も少なくなることで、その収縮力が通常の月経周期より少なくて済み、そのことで痛みが緩和されると考えられています。

 低用量ピルは、いずれの製剤も1カ月を基本として21日間飲み続け、その後の7日間は休薬するかプラセボと呼ばれるホルモン効果のない薬(偽薬)を服用する形式になります。一方、LEPの中には2.5〜3カ月に亘り連続的に服用することで、月経周期自体の間隔を空けることが出来るものもあります。

 またミニピルと呼ばれる黄体ホルモンのみの経口避妊薬が、今年に入りわが国でも発売されるようになりました。これはエストロゲンを含まないので先に述べた静脈血栓塞栓症の副作用が発生しませんので、40歳以上の方や喫煙習慣のある方でも安全に使用出来るという利点があります。

 いずれにしても、このような薬を安全に使用するためには、ネットなどで購入するのではなく、婦人科を標榜する医療機関で処方してもらうことをお勧めします。

 

 

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