わたしたちの健康2025年12月号 夜尿症
朝霞地区医師会 池田 直弥
夜尿症いわゆる「おねしょ」は、5~6歳を過ぎても夜間睡眠中に月に数回以上尿を漏らす現象を認めるものと定義されています。全国の5~15歳のうち約80万人(6.4%)程度が罹患(りかん)しているとされ、1年でその10~15%ずつが治癒していきます。5歳児では15%程度、10歳児では5%程度罹患しているとされ、15歳でも1%程度が罹患しています。病気の原因として夜間多尿・排尿筋過活動・覚醒閾値(かくせいいきち)の上昇が挙げられ、副次的な要因として遺伝的素因・発達の遅れが想定されています。実際、遺伝的素因については、患者さんの60%の両親に夜尿症の既往があります。
多くのお子さんとそのご家族が夜尿症に悩んでいますが、医療機関を受診されている方は全体の20%くらいです。自然に治るだろうと経過を見ているご家庭もあるかと思いますが、お子さん自身はどうして夜尿をしてしまうか分からず悩まれていることが多いです。夜尿症が改善しないことは、お子さんにとって精神的外傷をもたらし、いじめや仲間外れと同じように悪い経験とされています。夜尿症を少しでも早く治すことは、お子さんの健全な精神を育てるのに有意義です。
夜尿症は治療を行うことで、自然経過と比べて治癒率を2~3倍に高めることができます。ご自宅で今日からできる治療の基本は生活改善です。
規則正しい生活をすること
規則正しい生活をして、夕食は寝る2~3時間前に済ませるように努力をしましょう。夕食をとってすぐ寝ると、夕食時の食物の水分から多量の尿が生成され、夜尿の原因となります。また、早起きをすることで、夜尿の回数を減らすことができます。
水分や塩分のとり方に気を付ける
夕食後の水分摂取量については注意されているご家庭も多いのですが、口渇(こうかつ)の原因の多くは塩分をとりすぎていることです。夕食時の塩分を減らすことにより水分摂取も減っていきます。特に汁物は塩分が多いので、飲み過ぎないようにしましょう。
寝ているときの寒さ・冷えから守る
夜中の冷えは尿量を増やす原因となります。暖かくして睡眠をとることが夜尿を減らすことに役立ちます。ご家庭の事情にもよると思いますが、夕食後に入浴すると効果的です。
寝る前に必ずトイレに行かせ、睡眠中は無理にトイレに起こさない
夜中にトイレに起こすと中途覚醒の原因となります。中途覚醒は抗利尿ホルモンの分泌障害を引き起こし、夜尿症が治りにくくなります。また、寝落ちは夜尿の原因となります。
このような生活習慣の改善でも効果不十分の場合は、医療機関の受診をお勧めします。夜尿症の治療として代表的なものは、抗利尿ホルモン剤による治療です。この薬は腎臓に働き、尿の生成を抑制する薬で、これにより夜尿症を治療する薬です。睡眠中の尿の生成が減ることにより夜尿回数を減らし、睡眠の質が改善し、お子さん自身から分泌される抗利尿ホルモンの増加を促します。この治療は夜尿症全体の70%に有効とされています。
薬物療法の他にアラーム療法があります。これはお子さんの下着にセンサ―を取り付け、夜尿をした瞬間にアラームが鳴る仕組みです。お子さんを起こし、夜尿をしたことを認識させ、夜尿をしないように動機付けしていく治療法です。この治療法も十分な効果があるのですが、お子さん自身がご自分で起きられないことが多く、保護者の介助が必要になり、なかなか継続が難しい治療です。
夜尿症の遅延はお子さんの心に傷を残すことが予想されます。健全な精神を育て、安心して学校や習い事の宿泊行事に参加できるようになるために、夜尿症を早く治すことが望まれます。夜尿症の治療は小児科又は泌尿器科で受けることができます。お気軽に受診してください。
このページに関するお問い合わせ
企画部 秘書広報課 シティプロモーション担当
〒351-0192 和光市広沢1-5 市役所3階
電話番号:048-424-9091 ファクス番号:048-464-8822
お問い合わせは専用フォームをご利用ください。












