わたしたちの健康2025年4月号 最近の糖尿病治療
朝霞地区医師会 杉野 郁美
糖尿病治療で大事なのは、食事や運動などの生活習慣の改善です。食事療法としては、ごはん、麺、パン、菓子などの炭水化物を食べ過ぎないことが基本です。運動療法としては、1日20分~30分のウォーキング(少し汗ばむくらいの速さで)を習慣にしましょう。食後に歩くと効果的です。食事・運動療法でも血糖コントロールが不十分な場合には、患者さんそれぞれの状態に応じて内服やインスリン注射を行います。
様々な治療法がある中で、今回は最近注目されている2つの薬と、自宅で糖が測定できる機械をご紹介します。
1 SGLT2阻害薬
SGLT2阻害薬は、腎臓に作用する薬です。血中の糖を尿で排出させ、血糖値を下げます。このため、この薬を内服して効果が出ていると、尿検査で尿糖が陽性になります。この薬を内服すると、尿路感染のリスクが増えることが心配されていましたが、実際には増加しないことが分かっています。ただし、糖尿病の方はもともと感染症のリスクが高く、尿路感染予防のためにこまめに水分摂取することが大切です。
2 持続性GIP/GLP-1受容体作動薬(マンジャロ®)
GIPもGLP-1も、腸管から出るホルモンの一種です。GLP-1受容体作動薬は、膵臓に働き掛けてインスリン(血糖を下げるホルモン)を出すことで血糖値を調整します。また、食欲を抑える効果や、心臓病のリスクを減らす効果もあるといわれています。GIPも、膵臓でインスリンを分泌させる効果があります。その他、肝臓や脂肪細胞で脂肪を分解したり、食欲を抑える作用があります。
また、もともと発売されていたGLP-1受容体作動薬に、GIPの作用を加えたのがGIP/GLP-1受容体作動薬「マンジャロ®」で、GIP/GLP-1ホルモンと同様の働きをします。マンジャロ®は、週1回自宅で注射します。薬と針が一体化しており、おなかに当てて押すだけで簡単に注射ができます。用量2.5mgから投与を開始し、4週後に5mgに増やします。状況により15mgまで増やすこともできます。例えば、5mg使用した方では、HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)(糖化ヘモグロビンの割合)が平均2.4%低下し、体重が5kg以上減少したという報告があります。
副作用としては、胃もたれ、下痢などの胃腸障害があります。その場合にはマンジャロ®の用量を減らす、食事を小分けにするなどして対応します。
マンジャロ®の価格ですが、用量2.5mgを1か月使用する場合、3割負担で2,300円程度です。標準的な用量である5mgを1か月使用すると、3割負担で4,600円程度です。その他、在宅自己注射指導管理料などが別途かかります。
3 間歇スキャン式持続グルコースモニタリング(FreeStyleリブレ2)
FreeStyleリブレ2は、治療薬ではなく糖を測定する機械です。今までの血糖測定器は、自身の指に針を刺して血液を絞り出し、センサーに血液を吸い込ませて血糖を測定するものでした。FreeStyleリブレ2は、五百円玉くらいの大きさのセンサーを上腕に装着し、専用のリーダー又はお手持ちのスマートフォンをセンサーにかざすだけで、糖の値が表示される機械です。血液中の血糖をみるのではなく、皮下組織の中の間質液の糖濃度を測定するもので、多少の誤差はありますが血糖値を反映します。24時間糖濃度を測定していますので、低血糖の際にアラートを設定して知らせてもらうことも可能です。FreeStyleリブレ2のセンサーは、14日間使用できます。耐水性があり、お風呂やプールにも問題なく入れます。
保険適応は、インスリン加療中の方に限られます。3割負担の保険診療で月4,000円程度です。また、飲み薬で糖尿病の治療をしているけれど普段の血糖値が気になる方、健診で空腹時血糖が高めと言われ、何を食べると血糖が上がるのか知りたい方などは、自費診療にはなりますが試すことができます。ぜひ、ご検討ください。
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