わたしたちの健康2025年11月号 命にかかわる突然の胸の痛み 〜心筋梗塞にご注意を〜
朝霞地区医師会 前野 吉夫
私たちの命を支えている「心臓」は、休むことなく動き続け、全身に血液を送り出す大切なポンプの役割を担っています。この心臓の筋肉に酸素や栄養を届ける血管が「冠動脈(かんどうみゃく)」です。
この冠動脈が突然詰まり、血液が流れなくなることで、心臓の筋肉が壊死してしまう病気――それが心筋梗塞です。発症から短時間で命に関わることもあるため、心筋梗塞の治療は「時間との勝負」とも言われています。
心筋梗塞の怖いところは、ある日突然、症状が現れることです。前兆がない場合もあり、気づいたときにはすでに危険な状態に陥っていることも少なくありません。
どんな症状が出るの?
代表的な症状は、強い胸の痛みです。締めつけられるような、押しつぶされるような痛みを感じます。痛みは数分から30分以上続くことが多く、冷や汗、吐き気、息苦しさを伴うこともあります。
「肩が痛い」「歯が痛い」「胃のあたりが重い」など、胸以外の部位に違和感を覚えることもあります。特に高齢者や糖尿病の方では、典型的な胸の痛みを感じにくく、息切れや倦怠感だけが症状として出る「無痛性心筋梗塞」もあり、注意が必要です。
いつもと違う胸の痛みや呼吸の苦しさを感じた場合には、すぐに医療機関を受診、迷わず119番通報してください。「しばらく様子を見よう」は、命取りになることがあります。
心筋梗塞の原因は?
多くの場合、「動脈硬化」が背景にあります。動脈硬化とは、血管の内側にコレステロールなどがたまって血管が狭くなったり、もろくなったりする状態です。そこに傷ができ、血の塊(血栓)が突然できると、血流がストップし心筋梗塞を引き起こします。
高血圧・糖尿病・高コレステロール・喫煙・ストレス・肥満・運動不足などは、すべて動脈硬化を進める危険因子です。家族に心筋梗塞を経験した方がいる場合も、注意が必要です。
いざという時、どうすれば?
もし自分や周囲の方に「胸が痛い」「冷や汗が止まらない」「息苦しい」などの症状が出たら、すぐに救急車を呼びましょう。「様子を見よう」「少し休めば治るかも」といった判断は非常に危険です。
また、医療機関へ着くまでの間に心停止を起こす場合もあるため、心肺蘇生法(心臓マッサージ、AEDの使用)を学んでおくことは、命を救う大きな力になります。
次のような方は、心筋梗塞のリスクが高まります
・ 高血圧
・ 糖尿病
・ 高コレステロール血症(脂質異常症)
・ 喫煙習慣がある
・ 肥満、運動不足
・ 睡眠不足、慢性的なストレス
・ 家族に心筋梗塞の方がいる
これらの危険因子が複数ある方は、ぜひ一度かかりつけ医に相談し、生活習慣や健康状態を見直しましょう。
心筋梗塞を防ぐには?
心筋梗塞は「突然発症する病気」ですが、その背景には長年にわたる生活習慣が深く関係します。以下のような心がけが、動脈硬化の進行を防ぎ、心臓の健康を守ります。
1. 食生活の改善
塩分や脂肪分を控えめにし、野菜や魚を中心としたバランスのよい食事を心がけましょう。外食や加工食品は塩分や脂肪が多く含まれていることがあるので注意が必要です。
2. 適度な運動
ウォーキングや軽いジョギングなど、無理のない範囲で継続できる運動を日常に取り入れましょう。1日30分程度の有酸素運動が効果的です。
3. 禁煙
タバコは動脈硬化を急速に進行させる大きな要因です。禁煙をすることで、心筋梗塞のリスクが大幅に減少します。
4. ストレス管理と十分な睡眠
ストレスや睡眠不足も血圧や心拍に悪影響を与えます。リラックスする時間を確保し、しっかり休息を取りましょう。
5. 定期的な健康診断
高血圧、糖尿病、脂質異常症などは自覚症状が少ないまま進行します。年に一度の健康診断で、リスクを早めに発見し、対策を立てることが重要です。
まとめ
心筋梗塞は、誰にでも起こり得る病気ですが、生活習慣を整えることで予防が可能です。いざというときのために症状を知っておくとともに、日頃からの健康管理が何よりの備えです。
「ちょっと胸が苦しい」「何となくだるい」と感じたら、我慢せずに医師に相談してください。早めの受診が、命を守る第一歩になります。
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