わたしたちの健康2021年11月 インターネット、ギャンブル、アルコール依存

2021年11月01日 00時00分

 

インターネット、ギャンブル、アルコール依存

 

                                                                                                       朝霞地区医師会  中島 茂雄(なかしま しげお) 

 

 「依存」と聞くと、一般的になんだかあまりいいイメージはありませんが、人間というのはいつも何かに依存しています。人間の存在自体、地球、自然、社会の循環の中で生かされているので、それらに依存していると言ってもいいと思います。
 ただ「依存症」というときに、依存の形が極端なバランスを欠いた状態になっていることが多いです。

 たとえばアルコール依存症というのは、一例では心の痛みをアルコールを飲んで忘れようという行動にばかり依存してしまうことで起こります。人間は心に痛みを感じてそれがとてもつらいとき、様々なことをします。何もしない、とにかく寝る、人に話を聞いてもらう、仕事に打ち込む、気晴らし食いをする、などなど。そういう時にあまり人に頼れずアルコールで痛みを飲みくだそうと行動してしまうと起こりやすくなります。アルコールは人類最古の精神安定剤といわれる物質で、それ自体は悪いものではありません。ただ耐性ができやすい特徴があり、同じような鎮静効果を得るためには、必要量がどんどん増えてしまう傾向が強く、長期に連用した場合身体的依存を形成して、やめたときにいわゆる離脱症状が出てしまいます。認知症やいろいろな身体疾患のもとになってしまうので注意が必要です。

 ギャンブルもそれ自体は決して悪いものではないでしょう。たとえばたまにパチンコをするのはいい気分転換になるのではと思います。ただうつうつとした気分を晴らすために、パチンコにのみ没頭するとそれにハマってしまいます。
 ギャンブルの愛好家か依存症かの一つの目安として、
  (1)予算や時間の制限を決めない、決めても守れない(Limitless)
  (2)ギャンブルに勝ったら次のギャンブルに使う(Once again)
  (3)ギャンブルしたことを隠す(Secret)
  (4)ギャンブルに負けたときにすぐ取り返したいと思う
 のうち2つ以上あれば、依存症の疑いがあります。

 若い世代では、喫煙、飲酒、薬物への依存は減る一方で、ゲーム、スマホ、タブレットを手放せないインターネット依存が見られます。多くは一時的にはまってもいずれ落ち着いて来るものですが、学校や仕事に行けなくなる場合は、リアルな生活で何かしら問題を抱えていることが少なくありません。「ダメなものはダメ」という対応では、背景にある悩みを話す機会はなくなりますし、本人はオンラインで見つけた仲間との繋がりを奪われまいと全力で隠すかもしれません。

 依存症の手当ては、なかなか困難であることも多く依存症は依存症の専門病院で手当てされることが多いです。ただ依存症の方を悪い行動をやめられないダメな人というように見てしまうと孤立をより深めてしまいます。依存症は「孤立の病」とも言われます。みなさんが、依存症の方々の生きづらさを感じていただけると少しだけ孤立が和らぐかもしれません。