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わたしたちの健康2008年12月 肺炎球菌ワクチン
執筆者:滝澤 義和
肺炎は、この20年以上日本人高齢者の死因の第4位を占め続けています。肺炎死亡者の95%は、65歳以上の方です。在宅において罹り患かんしてしまう市中肺炎の起因菌である肺炎球菌は最も重要なワルモノ菌です。わが国では肺炎球菌による肺炎は70歳未満でこそマイコプラズマに次ぐ第2位の起因菌ですが、70歳以上では第1位です。菌の名前に「肺炎」と付いていますが、髄膜炎、副鼻び腔くう炎、中耳炎などの原因にもなります。
これほど怖い肺炎球菌感染症ですが、近年、薬剤耐性菌の増加が世界的な問題になっています。国内でも、代表的な抗生剤であるペニシリンが効かない耐性株が64%、エリスロマイシンが効かない耐性株が78%との報告もあります。
米国などでは肺炎球菌感染症は、ワクチンにより予防できる病気として認知されています。予防接種により、肺炎罹患率、入院率、そして死亡率をも57%低下させたとのスウェーデンの研究報告があります。前述した薬剤耐性肺炎球菌にもワクチンは有効です。肺炎球菌には80種以上の血清型があり、ワクチンはそのうち23種類にしか対応していません。しかし、発症頻ひん度どが高いものをカバーしていますので、肺炎球菌による肺炎の約80%から90%まで対応し、予防可能であるといわれています。
米国疾病管理予防センター(CDC)、予防接種諮問委員会(ACIP)では、ワクチンの推奨度をランク付けしています。最高推奨度Aとは、ワクチンを推奨すべき強力な疫学的根拠があり、接種による相当なメリットがある場合です。この推奨度Aには、すべての65歳以上の高齢者が含まれ、平成17(2005)年までの米国の対象者の接種率は63.7%と報告されています。米国では平成22(2010)年までに肺炎球菌ワクチンの接種率を90%まで上げるよう国策として提言しています。
一方、日本では現在、ワクチン接種は脾ひ臓ぞう摘出後の方のみが保険の適応となっており、原則自費での実費費用はおよそ7,000円から10,000円くらいまでが一般的です。平成13(2001)年にこの肺炎球菌ワクチンにいち早く注目し、日本で最も早く自治体による公費導入に踏み切ったのが、北海道のせたな町です。
高齢化率の高い同町では、平成元(1989)年から老人一人当たりの医療費が4年連続で日本一となり、以後も同様な状況が続き、自治体の財政を圧迫していました。しかし、公費導入の翌年からすぐに医療費が前年比で27%減という圧倒的な効果があらわれ、予防医療が町民の健康を守り、医療費も大きく抑制することを証明したのです。
さて、日本全国での昨年の報告では、65歳以上の高齢者の接種率は4.17%でした。この両者の差はいったいどうしてなのでしょうか。
インフルエンザの治療に要する費用と、予防接種費用とがそれほど変わらないからと子どもにワクチンを受けさせない若い親御さん。副作用の問題ですぐに強制接種を取りやめる国の姿勢。任意接種になった途端に受診率が極端に低下する疾病予防意識の低い国民性。はしか(麻疹)の流行を止められないにもかかわらず、ひんぱんに海外旅行に出て、世界最大のはしか輸出国となっている日本人を、世界中の人々がどのような目で見ているかご存知でしょうか。
予防接種率を高めるために65歳の誕生日に家族から肺炎球菌ワクチンの接種費用をプレゼントして、健康長寿を願うという慣ならわしを広めるというのは、いかがでしょうか。
昭和47年ごろから、朝霞地区医師会に寄稿いただき、朝霞・新座・和光・志木の四市広報に「わたしたちの健康」と題し、市民向けの医学情報を提供しています。
原稿の執筆は、朝霞地区医師会に所属する開業医又は病院の、実際にこの地で日々診療にあたり、毎日患者さんと接している医師が担当しており、高齢者から若い方まで幅広い人々を対象とした内容を、理解しやすい文章でお届けするよう心がけています。皆さんの毎日の健康にお役立てください。
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